狸の巻物 神社・神話の巻

神代の物語4. 天岩戸隠れ

(あめのいわとがくれ)
TOPページ狸の巻物TOP神社・神話の巻>神代の物語4. 天岩戸隠れ(あめのいわとがくれ)

失意で洞窟へ隠れた天照大神を呼び出さんとする神々の一大イベント

神々の系譜はこちら。


  • 誓約のあと、ご乱行の素盞鳴尊。占いに負けてそれをとがめられない天照大神のとった行動は、天岩戸(岩屋戸=「いわやと」とも言います )と呼ばれる洞穴に身を隠し、大きな岩でその入り口をふさいでしまうことでした。
  • 天照大神といえば太陽の神。その彼女が洞穴に隠れてしまったのですから、高天原も葦原中国(あしはらのなかつくに)も、世界は真っ暗 。これには八百万の神々も、困ってしまいました。なんとか、天照大神を岩戸から連れ出せないものか?
  • 八百万の神々は天の安の河原に集まり、ある神に望みを託します。それが知恵者、思兼神(おもいかねのかみ)です。
    彼は参謀として、天照大神をこの世に引き戻すための作戦を練りあげ、実行に移しました。
  • まず、日の神の使いである長鳴鶏(ながなきどり=ニワトリ)を天岩戸の前で鳴かします。次に鍛治職や鏡作りなどに鏡や玉飾りを造らせます。また男鹿の骨を焼かせてそのひび割れの具合で占いをするなどして、最適の祭りの準備をしました。
  • その祭りとは・・・
    天香具山で根こそぎに抜いてきた榊の木を岩戸の前に立て、上の枝に玉飾りをつけ、中ほどには白と青の布をさげて、これを天太玉神(あめのふとだまのかみ)にもたせて天照大神への捧げものとします。
    また天児屋根神(あめのこやねのかみ)には天照大神が出てきてくださるようにと太祝詞(ふとのりと)を唱えさせます。
    そのそば、岩戸の入口の横には天手力男神(あめのたじからおのかみ)を待機させておく、
    というものです。
  • さて本番、天宇受売命(あめのうずめのみこと)は、胸をはだけて乳房を露出し、さらには腰の紐をほどき、女陰をみえるほどに踊り狂います。美女のストリップということですね。これには集まった神々も大いに笑い転げ、祭りは最高潮に達します。
  • 天岩戸の中にいる天照大神は何事かと不思議に思い、ちょっとだけ細めに岩戸を開き、
    「暗くて皆が困っているだろうに、このように楽しげなのはどういうことか」
    と尋ねます。天宇受売命は
    「あなたよりも尊い神が現れになったからです」
    と答え、天太玉神といっしょに榊の枝につるした鏡を天照大神に掲げます。
  • いよいよ不審に思った天照大神は、天岩戸から少し顔を出して、鏡を覗いて見ようとします。
    いまがチャンス。思兼神が画策した瞬間がやってきました。
  • 思兼神の合図を受けて、待ちかまえていた天手力男神が、大岩を力任せに引き開け、天照大神の手を取って引っぱり出しました。
  • 天太玉神も、すかさずその背後にまわり、洞窟の入口に注連縄(しめなわ)を張ります。
    そして「二度と再びこの中にはいることがありません ように」と大神にお願いします。
  • このあと、天照大神が承諾すると、天手力男神が天岩戸を山ごと持ち上げ、下界へ向かって放り投げました。
    この山は現在の長野県あたりに落ち、岩戸を隠したという意味で戸隠山と名付けられました。今でも神社が残っています。
    注)このようにして、世界は光を取り戻しましたが、この神話は、皆既日食をあらわしているという見方が有力です。
    現実に西暦248年に皆既日食があったことが調べられていますが、「天岩戸隠れ」の物語はこの事実を元につくられたのではないかという説があります。
    作家の井沢元彦氏はこれが卑弥呼殺害事件を表しているという推理をしています。天照大神の力の衰退を象徴する事件だったということでしょうか。これは天照大神=卑弥呼ということですが、なかなか面白い説ではありますね。いろいろ研究してみる価値はありそうです。
  • 後日談ですが、素盞鳴尊はこの天照事件に懲りた神々によって責任をとらされ、持ち物はすべて没収されると同時に髭や手足の爪を切り落とされて高天原から追放されてしまいます。ちょっと可愛そうな気もしますが、それ以上に狼藉が度を過ぎていたということでしょうか。
    しかし、この後、地上に降りてから、素盞鳴尊はすっかり別人に。それが、次の八岐大蛇退治(やまたのおろちたいじ)の神話。「英雄」となってしまいます。
    人、いや神も変化するものですね。

(05/06/18)

神代の物語5. 八岐大蛇退治(やまたのおろちたいじ)へ続く。